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その恋を残して
第7章 眠り姫……か
本当に、どういうことなんだ。冷静な誠二さんが、こんなに取り乱すなんて?
そんな疑問を浮かべていると――
「ちょっと、そこの部外者――私の教え子に何か用なの?」
いつの間にやら、俺たちの傍らに居たのは、木崎先生であった。
「あ――これは失礼」
誠二さんは、俺から手を放す。
「アンタ、誰? 勝手に入ってもらっちゃ困るのよね」
木崎先生は初対面の相手に対して、全く遠慮をした感じもなく言う。俺は先生が独身である理由の一端を垣間見た気がしていた。
それはいいとして、このままでは、先生は誠二さんを追い帰しかねない。俺としても、それは困るのである。
「あの、違うんです木崎先生――この人は……」
そうフォローしようとした俺の前に、誠二さんが割り込むと。
「申し遅れました。僕は帆月蒼空の義兄(あに)です」
と、先程までとは打って変わり、にこやかに微笑んでみせた。
「帆月の?」
「いやー、貴女が担任の木崎先生でしたか。若くて綺麗な先生だと義妹からは聞いていましたが、僕の想像以上ですね」
「……若い? まあ、そう見られがちだけど、実際は三十――」
突然、先生は照れたようにそんなことを口走る。しかし、俺と目が合うと、コホンと咳払いをした。
「そんなことは訊いていません。帆月蒼空のことで何かあるなら、担任である私が伺いますけど?」
先生にそう言い寄られ、俺と誠二さんは顔を見合わせた。