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その恋を残して
第7章 眠り姫……か

 俺が道を示しつつ、田口はバイクを走らせて行く――。

 最初は、お節介な奴と思っていた。俺を見て面白がっているのかとも疑った。だが、今――田口の背中を見ながら思う。コイツと友達で良かった――と。

 思えば、随分と世話になっていることに今更、気がついていた。

 蒼空たちの家が見え、俺はそれを指差して田口に合図した。

「うわっ! マジか……半端ねえ豪邸だな」

 家の前にバイクを停め、田口は感嘆の声を洩らす。それは、無理もないことだと思う。二度目の訪問の俺の目にも、改めて浮世離れしたものに映っていた。

「じゃあ、さっさと行けよ」

 何故、ここに来たのか? 田口は、大して理由を訊くこともせず、俺を送り出す。

「サンキュー。田口ってさ――」

「ああ?」

「いい奴だよな。面倒見もいいし」

 田口は一瞬、面食らった顔をしてから――

「別に。他の奴だったら、頼まれてもしねーよ。お前だからだ」

「なんで?」

「不器用でさ、損な生き方してるように見えて――かねぇ?」

 そう言って、照れたように首を捻る。

「ハハ、そっか」

「ああ、そうだよ」

 最後にフッと笑みを零した田口は、そのままバイクで去って行った。

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