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その恋を残して
第8章 ……終わっちゃった、ね
「……わかった」
蒼空は小さく微笑み、そして話を続けた。
「――松名くんと怜未が心を通わせ始めてから、怜未は少しずつ自分の気持ちを話すようになりました。それは直接的な言葉ではなかったけれど、私にはわかります。怜未も松名くんを好きだということを。それは、私が望んだことだった筈。怜未が今までで一番、嬉しそうにしていた――それが、私だって嬉しいのに……なのに、私は……それが徐々に、辛くなってしまっていて……」
「蒼空……」
蒼空の瞳――零れそうな涙を、俺はそっと拭う。
「そして、木曜の夜のことでした。私は怜未と話すのが怖かった。いえ、怜未と話すことで、自分の中に芽生えたその感情が大きくなってしまうのが怖かったんです。私は心を閉ざし――だから、怜未は現れなかったの。そう気がついた時――私は既に深い眠りの中にいました。このまま、私が目を覚ましたら――私が私のままに目を覚ましたら、もう二度と怜未が現れない気がして――私、目を覚ますこともできずに眠り続けていたのだと思います。眠りの闇の中は、怖くて心細かった。その時だったんです。松名くんの声が聴こえたのは――」
「俺の声が、聴こえた――?」
「はい――私、とても嬉しくて――目を覚ますことができました」
「俺も、蒼空が目覚めてくれて嬉しかったよ」
俺を見て微笑んだ蒼空――しかし、何故かその直後には表情を曇らせる。
「でも、怜未は――」
怜未のことを考え、不安に陥っているであろう蒼空。