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その恋を残して
第8章 ……終わっちゃった、ね
その気持ちは、わかる。だけど――
「大丈夫だよ」
俺はきっぱりと言った。何がどう大丈夫なのか、その根拠などない。でも、俺は確かにそう感じていた。
誠二さんに、怜未が『交代人格』である可能性を聞いた時、俺はショックを受けた。それは、俺がそのことを、知らず識らずの内に肯定しようとしていた顕れだったのだろう。
だが、今は違っている。眠りの中にいた蒼空に、俺の声は届いていた。ならば、怜未が事故で倒れた時――蒼空と怜未の心が通じていたことを疑うことなどできる筈もない。
怜未の魂は間違いなく蒼空の中に宿っている。今なら、俺は、そう確信できる。ならば、怜未が蒼空に黙ったまま、何処かへ消えてしまうことなど、あり得ないことだ――と、俺は強く思っていた。
「蒼空――今夜、もう一度、怜未と話すよう望んでほしい。そうすれば、必ず怜未は表れてくれる。そして、忘れないでほしい。俺が蒼空を好きであること――それは決して、変わらないから」
「松名くん……」
その時、蒼空は嬉しそうに、微笑んでくれた。