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その恋を残して
第8章 ……終わっちゃった、ね
それから俺たちは、色んな店を見て回ったり、ゲームをしたり、ランチをしたり――ごく普通のデートを楽しんでいた。
怜未は楽しそうに笑う。その姿は今まで俺に見せたことのないもの。そして、それこそが本来の怜未の姿なのだろう。
怜未の笑顔につられるように、いつの間にか俺も思い切り笑っていた。
午後になり、俺たちは映画館へ行く。怜未が選んだ映画は、ハリウッドの大作でもこの夏に話題のアニメでもなく、地味な邦画だった。
恋愛ものともコメディーとも分類し難いその映画に、それでも少しずつ引き込まれてゆく。俺たちは互いの手を握りながら、心地よく時間が流れる感覚を共有していた。そして、ほどほどの感動を残し、スクリーンにエンドロールが流れてゆく――。
その時――怜未は、握っていた手にキュッと僅かな力を込め――
「今日は……楽しかった。とっても」
瞳を潤ませながら、そう呟いた。