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その恋を残して
第8章 ……終わっちゃった、ね
「松名くん――」
怜未は、震える声で俺を呼んだ。キュッとすぼめた肩――その全身をも小刻みに震わせている。そして、顔を上げ俺の目を見据えると――
「私は、松名くんのこと――好き!」
そう言った途端に、その瞳からポロポロと涙を流した。
俺は怜未の気持ちが、とても嬉しかった。
だから――
「怜未――ありがとう」
その言葉は俺の素直な気持ちを表したもの。しかし、その言葉で終わることはできない。俺は――心の中で探し出した言葉を、怜未に伝えなければならなかった。
「俺は――怜未がいてくれたから、蒼空を好きになることができたんだ」
まさに、陽も落ちようかという瞬間――俺と怜未の間を、風が吹き抜けてゆく。
怜未は涙を流しながらも優しく微笑えみ俺を見つめる。そして、風にその言葉をのせるようにして。
そっと、呟く。
「私の恋……終わっちゃった、ね」
(あっ…………!)
その言葉が耳に届いた瞬間のこと。
俺の脳裏に、昨夜の『夢』が想い起こされていた。
その時の蒼空と怜未の声が、俺の中で木霊する。