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その恋を残して
第1章 好きにならないで!
「なんで、そんな風に聞くの?」
「私って知らない間に、迷惑をかけていることがあるので……」
「知らない間に?」
「朝……私に何か言いかけてませんか? もしかしたら私、松名くんに何か……」
そこまで言い、帆月は困ったように口をつぐんだ。その彼女を見て、俺は疑問が深まってゆくのを感じている。
『知らない間』って、どういう意味? 昨日の俺への言葉を、今目の前にいる帆月は『知らない』? 否、そんなこと、ある訳がない。そうは思うものの、一方では、帆月の態度に違和感を覚える俺もいる。
しかし、目の前の帆月は、本心を話しているように思えた。だから、少なくとも俺を騙したり辛かったりしている訳ではない筈だ。
もしかしたら、帆月は何か特殊な事情を抱えているのかもしれない。漠然と、そのように考えた俺は、まず言っておく必要があった。
「変じゃないよ」
先に問われた質問に、俺はそう答える。
彼女が何らかの問題を抱えて、苦しんでいるとするなら。それ故に、自分が変に見られていると思い込んでいるのなら。少なくとも俺は、そう答えることを躊躇してはならないと思ったのだ。
「全然、変じゃないから」
すると、帆月は俺に微笑みを返す。
「よかった」
その笑顔は、とても眩しいものだった。