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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
この日は、体育の授業があった。
梅雨の中休みなのか、空は晴天。体操着に着替えた俺たちは、グラウンドに集合する。種目は、男子がサッカー、女子は陸上競技だった。
どちらかと言えば球技が苦手な俺は、あまり乗り気ではなかった。一応言っておきたいが、俺は基礎体力には結構、自信がある。
だから、個人の体力測定では軒並み好成績を修めるのだが……。如何せん不器用と思われ、技術を必要とする球技に於いて、俺が活躍する場面は皆無と言って間違いない。
パスとシュート練習を終えると、一同は二組に分かれグラウンドに散った。授業の後半はゲーム形式で締めるのが通例である。今日の俺のポジションはキーパー――というか、割といつもの定位置である。
前述の理由から、フィールドプレイヤーとしては、殆ど期待されていないということだ。まあ、別段そのことについて文句がある訳ではない。
今日のチーム分けは、かなり戦力に偏りがあったようだ。俺の入ったチームに有力な者が集中したのだろう。多くの時間が、相手側のフィールドで行われていた。つまり――必然として、キーパーの俺は暇になっているということ――。
そんな状態であったので、俺の視線はボールから放れ、帆月の姿を捜してしまうのだが、それは仕方のないことであった。
「――?」
しかし、競技をしている女子たちの中に帆月の姿は見られない。彼女はグラウンドの端に腰掛け、授業を遠巻きに見学している。
具合でも悪いのか? そんな風に思いながらも、体操着姿の帆月の姿を見られなかったことは若干、残念だった。あくまで、健全な高校生男子の意見として――。
そんな雑念を抱いた罰であろうか――?
「キーパー! 行ったぞ!」
その声を聴いてコートに視線を戻した時には、手遅れであった。
風を切って眼前に迫るボール――バチーン!
星の輝きを眼前に感じたのを最後に、俺の意識は遠のいていった――。