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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
俺が梱包をやり直しているのを、オバちゃんはジッと眺ている。しかし、暫くして納得がいったのか、工場の奥へ去って行った。その姿を横目で確認しつつ、俺は少しホッとしつつ作業を続けるのだった――。
普段は気のいいオバちゃんだが、仕事のこととなると、そこは厳しい。まあ、当然であるのだし、これは確かに責められても仕方のない凡ミスである。
『彼女』とは違うけど。心の中で、そんな言い訳だけすると、その後は気を引き締めて残りの作業をした。
「お疲れです」
「はい、ご苦労様。気をつけて帰りな」
「失礼します」
バイトを終えると、外はもう暗くなっていた。
「!」
頭にポツリと冷たいものが落ちる。どうやら、雨が降り出しそうだ。傘は持ってはいないが、家までは徒歩十分といった処だし、本降りになる前には帰れるだろう。俺はそのまま、足早に歩き始めていた。
バイト中にも俺は結局、帆月のことを考えてしまっていた。現状で、俺に何かできることはないのだろうか? その答えを捜していたのだ。
そして一つ、その答えらしきものを導いていた。それは、彼女に対して俺が意思を示すことである。俺は帆月蒼空を好きではない――そうはっきりと伝えることだ。
それは、当初に考えた逆告白に立ち戻ると言うことになる。しかし、その意味合いは初めのものとは異なる。当初は単に自分の体裁の為に、誤解を解きたいとの考えであったのだが、現在は帆月の為に、それを行おうとしているのだ。
何故、そういう結論に達したのか? それは、今日の保健室での帆月の言葉が決め手となっている。
『一目惚れは困る』と、帆月は言った。それは、初日の言葉『私を好きにならないで!』と、関連しているのは明らに思える。