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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
※ ※
帆月蒼空と出逢ってより四日目――木曜日の朝。
俺は授業の始まる三十分前には既に、学校に到着していた。そして、校門の陰に隠れるようにして、帆月を乗せた車が来るのを待っていた。昨日、言うと決めた逆告白は、やはりこの登校時が最大のチャンスであろうと思っての行動である――。
しかし、誤算が一つあった。それは、昨夜に降り始めた雨が、現在もしとしとと降り続いていることだ。傘を差しつつ、この場所で待っていることは吝かではないのだが、お互い傘を差しながらでは、些か話がしづらいと予想される。校舎に入れば一目も多い。できれば、それまでに目的を果たしておきたいものなのだが……。
そんなことを考えている最中。キィ――と車の停車音を、俺の耳が聴きつける。急いで校門から飛び出してみると――
「お嬢さま――どうぞ」
と、開いた傘を差し出しつつ、沢渡さんが後部座席のドアを開けていた。
その時、車から降りてきた帆月の瞳が、正面に立つ俺を見つける。そして「あっ」と帆月の口が、そう声を発したように動いた。更に、その直後、彼女は微笑む。
ドキリと、早くも鼓動の高鳴りを感じていた俺にしてみれば、その後に彼女がとった行動は、驚愕に値すると言うべきだろう。