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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
「沢渡さん。傘はいいです」
「ですが……?」
流石に困惑する沢渡さんをよそに、
タッ――と、勢いよく地面を蹴り帆月の身体が、俺の差す傘の中に滑り込んで来た。
「――!」
人生で初となる相合傘。帆月は、唖然とする俺の顔を愉しそうに眺めた。
「校舎まで、お願いしますね」
悪びれることなく、そう言う帆月。
「あ、ああ……」
何とかそう答えた俺だが、心臓は踊り出しそうだった。
しかし、俺たちを眺める沢渡さんの視線が、少し俺を冷静にさせる。それは、何かを危惧するような、そんな視線であった。
「お願いいたします」
沢渡さんは、一礼をした後に車に姿を消す。
「では、行きましょう」
「うん……」
帆月を濡らすまいと気を遣い、歩調を合わせながら校舎へと歩く。只でさえ動揺している俺に――
「もしかして、私を待っていたんですか?」
すぐ近くの帆月の口が言った。困惑、そしてドキドキが止まらない。
「そう――待っていた」
でも、それはキミのことを、好きじゃないと言う為――だけど、
「フフ、嬉しいです」
頬を微かに赤く染める帆月に、もう言える筈がなかった。
そして、俺は気がく。今日の帆月も、昨日の帆月とは違っていることに……。