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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密

 帆月がこの学校に来てより一週間足らず。二人が既に付き合っている、なんてことは、まず考えられない。少なくとも、俺の知る限り、帆月にそれはあり得ない。

 だとすれば、今現在の状況は一方が一方を呼び出すことにより成り立っていると考えるのが自然だ。体育館裏というベタなシチュエーションも、それを物語っている。

 後はどちらが呼び出したのかだが、そんなの内田に決まっているじゃないか。根拠を言う気もない。九十九点九九九……パーセントそうに違いない。だったら――

 俺は踵を返すと、体育館の壁に張りつき、角より顔を出し裏手の方を見る。褒められた行動ではないが、そうせずにはいられなかった。

 二人は何やら話していた。思ったより奥の方にいる為、声は聴こえない。だが、携帯を片手に持ち、大きな身振りをしながら頻りに話しかけている内田に対して、帆月は困惑した表情を浮かべながら俯くばかりである。

 言葉は聴こえなくとも、内田が帆月にアプローチをかけていることは、間違いないのだろう。すると――

「だから――困るって言ってるじゃないですか!」

 帆月のその声が、俺の耳にもはっきりと届いた。

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