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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密
「――!」
困惑していた帆月の顔つきが、変わっていることに俺は気がつく。あの顔は、初めて出逢った時、俺に向けたものと同じ? その瞳には、激しく拒絶する意思が反映している。
そのことに気がついた瞬間――
「帆月さん!」
二人の元に駆け寄りながら、俺は思わずそう声を発した。
帆月と内田が一斉に俺の方を見る。
さて、どうしようかな? 勢い声をかけてはみたものの、はっきり言ってノープランである。
「何だ、お前……」
ずいっと歩を進め、内田が俺の前に迫っていた。
「あのさ……木崎先生が呼んでいるんだ。一緒に来てくれないかな……」
俺は内田の肩越しに帆月を見ながら、咄嗟にそんなことを口にした。
「少し待ってろ! コッチは、まだ話が――」
凄みを利かせつつ、内田がそう言いかけた時である。
えっ――?
俺の左手を強く掴んだのは、帆月の右手だった。
制止しようとする内田を振り切ると、俺の手を引き、帆月は全力で駆け出して行く――。