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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密

 俺は帆月に誘われるまま、沢渡さんの運転する車に乗っていた。

「お嬢さま――どちらに向かわれますか?」

「家でいいです。それから、普段の呼び方で大丈夫ですよ。沢渡さん」

「しかし――」

「構いません」

 沢渡さんは、一瞬ルームミラー越しに、俺を見る。そして――

「かしこまりました。怜未(れみ)さま……」

「――!?」

 沢渡さんは、今の帆月のことをそう呼んでいた。

 『私と蒼空』『怜未』――それぞれに聞かされた、その響きが帆月の秘密の奥深さを物語っているように感じる。

 今、俺の横に座っているのは、つまり『帆月怜美』ということなのか?

 俺の想像を遥かに超えて『二人』の秘密。否、その事実が明かされようとしていた。

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