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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密
※ ※
帆月の家。沢渡さんの言葉に、俺は取り乱していた。
「事故で死んだ? そんな、だって……」
俺は引きつったような笑みを浮かべる。沢渡さんの性質の悪い冗談だ。そう思うしかなかった。だって、さっきまで俺たちといたのが怜未だと言っていたじゃないか。
そんな俺の想いを沢渡さんの表情が否定していた。沈痛な面持ちをし、細く開いた両目を微かに潤ませている。俺は沢渡さんのことを良くは知らない。
それでも、冗談を言っている筈がないことは、理解せざるを得なかった。
「話を……続けてください」
「わかりました……」
沢渡さんは、ゆっくり立ち上がり、窓際まで歩く。
「理由がございましてね。私がお仕えする帆月家に、お二人が参られましたのは丁度、小学校に上がる歳の頃でした。詳しくは申し上げませんが、お二人は帆月家の奥様の実子ではございません」
そして、館の庭を眺めながら、話を続けた。
「――そんな事情もありまして、帆月家に於けるお二人を取り巻く環境は、決して温かいものではなかったと、言えましょう。それでも、お二人には強い絆がございました。ですから、どんな困難をも、お二人は乗り越えて行かれることができたのです。とても仲が良く、とても可愛らしい御姉妹でした」