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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密
想いにふける沢渡さんは、とても優しい顔になっている。しかし、程無くその表情を曇らせていった。
「しかし、三年前のこと。怜未さまは、通学途上の交差点で乗用車に跳ねられ重傷を負われたのです。事故後、病院に運ばれ手術が施されました。しかし臓器へのダメージが大きく、怜美さまは意識不明の重体に陥ります。その時、眠ったままの怜未さまの傍らに、その手を握り続ける蒼空さまの姿がありました。蒼空さまは、怜未さまの側を片時も離れることなく、祈り続けておられました。必ず助かると、恐らくそう信じながら……」
話を聞き、その病室の一場面がイメージされ、俺はグッと胸に込み上げるものを感じていた。
「――ですが、その祈りも通じることはありませんでした。事故より三日後――ついに意識が戻らぬまま、怜未さまはお亡くなりに……」
沢渡さんは、何かを悔いるようにグッと右手を握っている。話を聞いていればわかる。彼はきっと二人のことを本当に慈しんでいたのだと。それ故の無念が、握った拳に現れていた。