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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密
コンコン――恐る恐るしたノックの音に反応して。
チャッ――。程無くして、そのドアは開いた。
出迎えた怜未が怪訝そうな視線を向けたので、俺は不意に顔を背けていた。
――くす。
笑った怜未を、俺はまじまじと見る。
「想像した通りの顔だね。入って」
怜未に言われ、俺は部屋へと足を踏み入れた。
「あ、その椅子に座って」
怜未は、そう言うと自分はベッドに腰を下ろした。
勧められた椅子に座りながら、俺は何と声をかけるべきかと言葉を探す。
「信じられないんでしょ?」
「そんなことない……けど」
「けど?」
「信じるだけの器が、まだ俺に備わっていない……そんな感じ」
「松名くんは、やっぱり優しいね」
「えっ?」
「信じなくて普通。それどころか、からかうなって怒る人だっていると思う。でも、松名くんは、信じられない自分を責めているのね」
「そうじゃない。だって嘘じゃないことはわかっているんだ。それは、話をしている沢渡さんを見てわかっているのに……」