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その恋を残して
第4章 二人で一人、なのです
俺と蒼空は、並んで遊歩道を歩く。
この遊歩道は、公園をグルリと一周するように設けられており、大体二十分くらいの散歩コースとなる。道の両側は木々に囲まれ、初夏の新緑が鮮やかであったが、その景色を愉しむ余裕もなく、共に俯いたまま俺たちはゆっくりと歩く。
まだ互いに挨拶以外の言葉を交わしてはいなかった。
蒼空と会うのは、つまり放課後の美術室の――あの時以来ということ。理屈ではそれをわかっていながら、それでも戸惑いを覚えてしまう。だが、いつまでもそうしてはいられない。
それを事実と踏まえるのならば、俺は蒼空を傷つけたままだった。
「あの……帆月さん」
「――はい」
歩き始めてから、俺たちは初めて顔を合わせる。蒼空の顔は、何処か不安そうだ。
「この前はゴメン。何であんなことを言ったのか、自分でもわからない。でも、後悔していて……だから、勝手かもしれないけど、取り消してほしい。本当にゴメン……」
『帆月さんのこと……好きでは、ないから』――その言葉を取り消した上で、俺は言葉だけでなく、頭を下げると心の底から謝っていた。