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その恋を残して
第4章 二人で一人、なのです
遊歩道の途中にある簡素なアスレチック遊具に、蒼空は無邪気な表情で挑戦する。ロープに吊られた不安定な板の上を、ロープを持ち替えながら順々に渡って行くのだが。
短めのスカートの裾を気にする様子もなく、おぼつかない足取りの蒼空の姿は、見ているこっちがハラハラしてしまう。
そう言えば、蒼空の私服を見るのは初めてだ。それだけのことが、結構嬉しく感じられ新鮮な思いである。そんな感慨に浸っていると、
「きゃっ……!」
急に蒼空がバランスを崩した。どうも右足を踏み外したようだ。
「ロープを放さないで」
俺は咄嗟に傾いた蒼空の背中を支える。
「す、すみません」
「大丈夫――支えているから、ゆっくり降りて」
「はい……」
「あ、ちょっと!」
だから、ゆっくりって。そう言う間も与えず、蒼空はロープを放すと、俺の方に身体の向きを変えた。そもそも、そんなに高い位置ではない。だから、無事に降りることはできたのだけれど……。
蒼空は両腕を俺の首へと巻きかせる。端的に言えば、俺に抱き着いてしまった。