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その恋を残して
第4章 二人で一人、なのです

 しかし、ここで一つ疑問が浮かんだ。俺たちは、いわゆる恋人同士なのであろうか? ――と。

「…………」

 暫し考えてはみたが、それはまだ違う気がする。あの日、確かに俺たちは互いに気持ちを伝えている。だが、どちらも「付き合ってください」と、いった意味の言葉は発していなかった。

「やっぱ……言った方がいいかな? 今度は俺から……」

 そう口にした時、俺は突然、見えないプレッシャーに苛まれる。

「松名くん!」

 その時、気づかぬ内に到着していた車から、蒼空が飛び出した。いつもと違い自らドアを開けている。

「ごめんなさい。待ちましたか?」

 蒼空が俺の元に駆け寄る。

「大丈夫。じゃあ、行こうか」

「はい。では、いってまいります、沢渡さん」

「いってらっしゃいませ。お気をつけて――」

 沢渡さんは、車の傍らに立ったまま一礼をした。

「――?」

 一瞬だけ合わせた沢渡さんの視線に、僅かながら気になるものを感じながら、俺は蒼空と並んで歩き始めた。

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