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その恋を残して
第4章 二人で一人、なのです
だって、初日、帆月蒼空として初めて出逢った怜未は俺に……。俺は、初めて逢った時の怜未の瞳と、その後に言われた言葉を思い出していた。
怜未が俺にいい印象を抱いた筈もなく。むしろ逆だと思う方が自然だ。
「じゃあ、私が松名くんに一目惚れしたのかな」
「まさか、そんな……」
照れる俺を見て、蒼空が悪戯っぽく笑っていた。
「あ、からかったの?」
「フフ、どうでしょうか。私にもわかりません」
そんな風にじゃれ合い蒼空と話ながら、とても愉しいと感じている。こうして、少しずつお互いを理解してゆく喜び。俺はそれを初めて体験している。
初めての恋に浮かれながら。でも、見えない振りをしているつもりはなかった。今朝の沢渡さんの視線が語っていたこと。『一目惚れ』と聞いて感じること。
そして、俺をその現実に向き合せたのは、他ならぬ蒼空なのであった。