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その恋を残して
第4章 二人で一人、なのです
※ ※
「お前、帆月と付き合ってんの?」
いきなり投げられた直球の如き問いに、俺は肩を揺らしてギクリとする。こんな無遠慮な奴は一人しかいない。当然、俺の悪友・田口であった。
「な、なんで?」
「朝、一緒に登校してきただろ。朝練の最中に見かけたぜ」
田口は野球部である。嫌な奴に見つかってしまったものだ。
そりゃ、一緒に歩いていれば一目にはつくのだし、そういう意味では俺の配慮が足りなかった訳ではあるが……。
「まだ、付き合っている訳じゃない……ような」
「でも本来、車で送迎されている帆月が、歩いて登校して来たことから察するに、何処かで待ち合わせしたってことだろ?」
コイツ、推理力がハンパねえ。と、妙なことに感心している場合ではない。
「イヤ……そうなんだけど……」
明らかに言い淀む俺を見て、田口はため息を洩らした。
「別に冷やかすつもりはないって。はっきりしておいた方がいいってこと。只でさえ帆月を狙っている奴は多いんだぜ」
それは確かに。先日の内田の件も記憶に新しい。だが、朝も考えたように、まだ付き合っていると言い切れる状況ではないのである。
「今は、見て見ぬ振りで頼む。はっきりしたら、お前には言うから」
俺が手を合わせつつ、そう願うと――
「早い方がいいとは思うけどな……」
とりあえず、田口はその追及をそれで終わらせてくれた。