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第4章 二人で一人、なのです

「それって、結果として比べてるのと同じことじゃ……？」

「だから、個を見つめるのよ。一人一人ね……個を理解した上で、二人のどんな点が違っているのか、それを考えてみるの」

「なんか、難しいよ」

「参考程度に聞いておけばいいわ。大体、人との関係なんて日々、変化してゆくものだから……。母さんが言いたいのは、焦って結論を出すなってこと」

「…………」


　自分の部屋に入ってからも、どうも頭がすっきりしない。母親には、あんな質問をしてはみたが、そもそも質問自体が俺の悩みとは、ずれていることは承知している。

　蒼空は俺に望んだこと。それは、自分と同じように、怜未を好きになること？

　確かに自分が愚かで浅はかだったことは、認めなければならない。俺は蒼空と付き合うことを、単純に考えすぎていた。当然、そうしたければ、第一に怜未のことを考える必要があった筈である。

　しかしそれでも、蒼空の言ったことには違和感を覚えてしまう。二人を同じように好きにならなければ、付き合えないなんて。それでは怜未の気持ちを無視していることになってしまう。

　大体――怜未が、俺のことを好きな筈がないのだから。否、むしろ――俺は初日の怜未の言葉を思い出し、ハッとする。


　『私を好きにならないで』とは、どんな意図があって言った言葉なのだろう……？


　そうか……彼女たちの秘密を知った今ならば『私』とは『怜未』自身のことを指しているのだと、そう理解することができる。

　怜未は俺の好意が自分に向けられることを拒絶した。その一方で、俺の好意が蒼空に向くことについては、むしろ後押ししているようさえ感じさせる。それは、どんな意味があったのだろう？　

　しかし、俺が一人で幾ら考えてた処で、その答えは見つかりそうもなかった。

「二人の違い――か」

　考えに行き詰った俺は、さっき母親に言われた言葉を呟く。

　違いと言われてもな。そもそも同じ身体なのだから、外見は全く同じ。言葉遣いは結構違う。普段は怜未が蒼空の口調を真似ているけど、俺の前で話しているのが、彼女の本来の口調なのだろう。

　否、そんなことではなく、もっと根本的な違いを考えなければならない。例えば、二人が俺に対し示した行動で印象深いこととか。

　それなら――