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その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ
結局、俺たちは怪我をすることもなく、二人で学校へ向かった。その後、怜未は平静を取り戻してはいたが、ある種の気まずさからか、それからは何も話してはいない。
俺としても反省する。怜未に動揺を与えるようなことを言ってしまった。怜未が怪我でもしていたら、そう考えるとゾッとする想いがする。そんな遠慮もあったのだろう。俺はこの日、怜未と話すことなく学校を後にした。
怜未は淡々と授業を受けてはいたが、やはり何処か近寄り難い雰囲気を漂わせていたのかもしれない。
それにしても……。俺は朝の怜未の言葉が気になっていた。
『蒼空を守ってくれて』と、彼女は言った。
二人は同じ身体を共有してる。そして、元々は蒼空一人の身体だ。その上で怜未の口から出た言葉を考えた時、俺は怜未の複雑なる胸中を垣間見た気がしていた。