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その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ

    ※    ※


 今日はバイトの日。工場で、いつもの作業をしていると――

「松名くん。悪いけど島田工業さんについてきてくれない? 荷物の積み下ろし頼みたいんだわ」

 オバちゃん(社長夫人)が、そう声をかけてきた。

「わかりました」

 俺は返事をすると、オバちゃんの運転する軽バンの助手席に乗る。

 オバちゃんによると、明日生産分の部品が足りないらしく、それを取りに行くということらしい。オバちゃんは、工場内を仕切ったり事務をこなしたり色んなことをやっている。こんな小さな会社においては仕方のないことのようである。

 目的の島田工業は割と街中だった。オバちゃんは会社の前の道に車を停車すると、車を降りて俺に指示を与えた。その指示を受け、俺は部品の入ったダンボールを車に積み始める。結構な量があり、一つ一つのダンボールも重かったので、それなりの重労働であった。

「ご苦労さん。ちょっと話してくるから乗ってなさい」

「はい」

 オバちゃんにそう言われ、俺は車に乗って一息ついていた。そうして何気にフロントガラス越しに前を見ていた時のこと。


「あれは?」

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