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その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ
「何か悩みがあるなら明日の昼にでも来てみなよ。精神科だからって、そんなに構える必要はないんだよ」
「だから、僕は別に……えっ、精神科?」
「そうだよ。ウチの診療科目は心療内科・精神科あと一応、内科も看るけどね」
精神科――その言葉に俺は胸騒ぎを感じた。だから、深く考えることもせずに、言葉が口を滑る。
「ほ、帆月蒼空を――知っていますか?」
「!?」
その名を聞くと医師の笑顔は消え、その表情に警戒を顕にする。その様子に徒ならぬものを感じ、俺は話を続ける。
「僕は彼女のクラスメイトです。さっき、彼女がここから出て来るのを見たんです」
「あのね……」
医師は俺に顔を近づけると、低い声で言った。
「そういう名の患者がいたとして、そのことを医者である僕が、他人に話すと思うのかい。子供じゃないんだ。それくらいわかるだろ?」