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その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ
※ ※
沢渡さんから話を聞いている。俺は、その医師にそう説明をした。
すると、医師はクリニックに程近い喫茶店へと、俺を連れて訪れる。
帆月誠二(ほつきせいじ)――医師は、最初にそう名乗る。そして、自分のことから順番に話を始めていた。
「僕の家は、あるグループ会社のトップの血筋でね。そうなると、子供は跡継ぎ……親の地位を継承すべく、幼い頃から英才教育を施される。自分の意思なんてあったもんじゃない。まさに、言いなりの人形さ……」
「……」
「そんなことに嫌気が差してね。僕は親の反対を押し切り医大に進んだ。もっとも医者になりたかった訳じゃない。決められたレールを外れられるなら何でも良かったんだ。まあ、親には勘当されたも同然だが、別に後悔はしていなかった。三年前のあの時までは……」
「三年前?」
「ああ。聞いているんだろ。怜未が事故に遭った時のことだ」
「はい……」