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その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ

「断っておくが、僕は違うよ。当時から家への反発があった僕は、できる限り二人の味方をしていたつもりだ。蒼空と怜未は本当に良い子だったし、本当の妹のように思えていたからね。しかし、先に言ったように僕は家を出ることになる。その後は――」

「誰も頼る人がいなかった――?」

「そうだろうな。いいや、古くから家に仕えていた沢渡さんは、当時から二人を気にかけていた。が――当然、家の者とは立場が違う。とても庇いきれはしなかっただろう。僕は家には未練はなかったが、その後の二人のことを考えると、後ろ髪を引かれる想いだった。だから、後に怜未の知らせを聞いた時に、僕は初めて家を出たことを後悔したんだ」

「…………」

 蒼空と怜未――幼き頃から二人は、多くの困難を共に乗り越えて来たのだろう。義兄である誠二さんの話を聞き、俺はそのことを実感する。

 だからこそ、蒼空と怜未の絆は、強く強固なものになった。その絆こそが、一つの身体に二人の意識が共存することを可能にしているのだろう。

「ところで――」

「はい?」

「沢渡さんは、今の蒼空の状況をどう説明したのかな?」

「それは――」

 俺は、沢渡さんに聞いた通りに説明をする。

 誠二さんは、黙ってそれを聞いた後、少し悩むような素振りをした。しかし、改めて俺の方を見ると、その口を開いた。

「それで、松名くん――だったかな。キミは、その話を信じたのかい?」

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