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秘密の恋人
第3章 始マリノ裏側
「イヤ…帰りたくない…」

彼女は私の首に齧り付いたまま離れない。
夜22時のバス停。

人の目もあり、それ以上そこには居られなかった…
タクシーを拾うことは諦めたが、放って帰るわけにもいかず、寒さに耐えかね、どこか屋内に移動しよう、と思った。
どこか、横になって休めるところ…考えた末に出した答えがホテルだった。
この時点でも、まだ手を出すつもりなんかなかった。

少し休むだけ。

ベッドに寝かし、起きるまで待っていてやろう、そう思った。
室内には椅子ひとつなく、大きなベッドがあるだけだ。仕方なくベッドの端に腰掛ける。

彼女が、泣いていた…

「…及川さん?…大丈夫?」

そっと手を伸ばし、涙を拭いてやる。
彼女は私の手を両手で取り、甘えるように頬ずりした。

「…私の、何がいけなかったんですか…?」

「え?何の話?」

「何で、私じゃないの?初めての彼だったのに…私遊ばれてだけなんですか?」

知らんよ…なんて言えるわけがなく。よしよしと髪を撫で、慰める。

「及川さんは、可愛いよ。君を選ばないなんて、見る目のない男だな。」

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