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秘密の恋人
第19章 波乱ヲ呼ブ手紙
義隆さんは手紙をクシャッと握り潰し、ゴミ箱に捨てた。

「夕飯、何にする?」

と何事もなかった様に出前のチラシを広げる。

「…読まないの?」

「読む必要はない。今更話したい事も話すべき事もない。彼女とのことは、もう終わった過去だ。私には今、菜摘といるこの生活の方が大事だから。」

義隆さんの言葉に、胸の奥の黒いモヤモヤがふわっと霧消するのを感じた。

結局出前は、お寿司を頼み、それを待つ時間。
私はゴミ箱から手紙を拾って義隆さんに渡す。

「読んで。」

「菜摘⁉︎」

「義隆さんは奥様に用はないのかもしれないけど、奥様はきっと大事な用件があってこの手紙を書いたと思うの。だから、読んで下さい。」

「…菜摘は、平気なの?」

「義隆さんの言葉を聞くまでは嫌だった。手紙を読んで、何か大変な事が書いてあって、義隆さんと私のこの生活が壊れるんじゃないかって不安だった。だから、先に開けようかとか、渡さずに処分しようかとも思った。でも、義隆さんが、私の方が大事だって言ってくれるから、その言葉を信じる。きっと、読んでも読まなくても気になって後悔するから…それなら読んで決着をつけたいの。」

義隆さんは、溜息をついてかぶりを振る。

「…女性は…強いな…」

諦めて立ち上がり、サイドボードのペン立てからペーパーナイフを抜いて、皺くちゃになった封筒を広げて開封した。

手紙を読む義隆さんの顔が、徐々に険しくなっていく。
何が書かれているのかしら…
気になりながらも、私は見守るしかなかった。

読み終えた義隆さんは、眉間に皺を刻んだままの難しい顔で、重い溜息をついた。

「…ったく、どうしろっていうんだ…」

と呟く。
義隆さんがローテーブルに放り投げた手紙を手に取り、

「読んでもいい?」

と聞いた。

義隆さんが軽く頷く。
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