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秘密の恋人
第19章 波乱ヲ呼ブ手紙
《前略
お元気ですか。突然のお手紙すみません。
私は、あの後、貴方と別れるきっかけになった彼と暮らすこともなく、すぐに独りになりました。
今更貴方がたの元に戻れるわけもなく、実家に戻り、知人のツテでスナックで働いていた時、今の主人と知りあい、縁あって結婚しました。今年で10年になります。
今の主人との間に子供は産まれていませんが、主人は若くして奥様を亡くされ、当時は5歳の男の子と2歳の女の子を育てていました。
その子たちが、今私をお母さんと呼んでくれています。
上の男の子が、今年高校に入学しました。その制服を見ていたら、不意に隆行はどんな青年になったかしらと思って、涙が止まりませんでした。
貴方の元で、きっと立派な大人に成長したことでしょう。隆行の誕生日が近づくにつれ、涙が溢れ、ひと目会いたいという思いが募ります。
私の様子を見かねた主人に勧められ、今この手紙を書いています。
許してくれとは言えません。
ただ、大人になった隆行の顔が見たい。
貴方にも新しい家庭があるかもしれませんし、会って、言葉を交わせなくてもいいのです。
貴方がたがどこかでお食事でもしている姿を遠くから見せていただくことはできませんか?
もし、貴方がこの手紙を読んでくれているのなら、無理を承知でお願いします。
乱筆にて失礼します
桜子 》