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秘密の恋人
第19章 波乱ヲ呼ブ手紙
「…そんなん、他人大事にしたって俺らには一切関係ないことだろう。俺も父さんも、アンタの勝手のせいで何年も苦しんだのに…そんな勝手な思い込みで1人幸せを謳歌してたんだな。」
「隆行、言い過ぎだろう。」
口の挟みどころを伺いながら黙って食事を進めていたが、思わず静止してしまう。
「父さんにも一端はあることだ。母さんだけを恨むのは筋違いだよ。離婚は夫婦の問題だ。そして子供はその被害者だと思う。お互いやり直すことができない以上、2度と同じ過ちを繰り返さないよう、お互い今のパートナーを、大切にするしかできないんだ。それは父さんもそうだ。今、母さんとやり直して幸せにしてやることはできない。お前には辛い思いばかりさせたと思っている。だが、もう過去に戻って、何事もなかったことにはできない。それは、もうお前も大人だし、理解してほしい。」
「親も1人の人間で、完璧じゃないってことくらい、昔から知ってたよ。でも、頭で理解するのと、心で納得するのは違うんだ。俺は…つい最近まで、女のコとまともに向き合えなかった。いつか、自分の前から突然消えていなくなるんじゃないかって、思ってしまって…」
突然の告白に思わず隆行を凝視してしまった。
「お前、同棲してた彼女が居たんじゃなかったのか?」
「そんなん居ないよ。家に帰らなかったのは、友達の家とか、その場限りの付き合いだ。説明が面倒だから彼女の家に転がり込んでるって言ってただけだよ。一緒に住むほど長続きしたことない…」
「私は…本当に言葉を額面通りにしか受け取れない、気の利かない男だな…妻の寂しさも、子供の言葉の裏も汲んでやれない…」
「…けど、ようやく向き合えそうなコと出会えた。今、そのコといて幸せだって思えるから。あんたらみたいな出来の悪い親も許してやるよ。反面教師にはなりそうだしな。」
その後。ランチの残りを無言でかき込み、隆行は席を立つ。
「ごっそさん。もう行くわ。彼女待たせてるから。」