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秘密の恋人
第20章 約束
そして春。
指輪の発売が始まり、採寸のためにお店に行く。
仕上がりは4〜6週間と言われた。

ご予約が混み合っておりまして、お待たせしまして申し訳ございません、と恐縮する店員さんに、いいえ、急ぎませんから大丈夫です。と答えながら、順調な滑り出しみたいで、よかったね、と2人で笑いあった。

待たされるのに嬉しそうにしている私たちを店員さんが不思議そうに見ていた。

完成に先駆けて、義隆さんの誕生日がある。
密かに決めていたプレゼントを渡した。

チャコールグレーのレインコート。アウトドアブランドの物らしいんだけど、でも如何にもアウトドア!って色味やデザインではなくて、質感もマットでシンプルだった。アウトドアブランドだけに、機能性はバッチリで、軽くて小さく折り畳めて皺にもなりにくい。ネットの記事で、アウトドアブランドのレインウェアがビジネスシーンでも使える!というのを読んで見に行ったら、店員さんにもスーツにもオススメです!と言われた。
お値段は3万円代後半で、レインコートと思えば高いけど、ジャケットと思えばそうでもないか、と奮発して買ってみた。

ケーキを食べて、コーヒーを飲んでからプレゼントを渡すと、義隆さんは誕生日に人から何か貰うなんて何十年ぶりだろう…と驚いていたけど、部屋着の上から着てもらったら、サイズもピッタリで、着てないみたいに軽い、と喜んだ。

「指輪のお返しには遠く及ばないけど、日常生活で何か使えるものをあげたかったの。」

「最近は傘を持ってない時に降られて、コンビニで買ってビニール傘が増えていくのが困ってたんだ。これなら鞄の中に常に入れておけばいつでも困らないし、傘のように置き忘れたりすることがないからいいね。ありがとう、菜摘。」

レインコートを脱いで畳み、付属のポーチにしまいながら、片手で私を抱き寄せてキスしてくれた。
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