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秘密の恋人
第11章 虚勢
菜摘はまだ、28歳。

…もう、28歳。

結婚適齢期、というやつか…
彼女との結婚を茶番としか考えられない私より、若い男に引き渡すべきなのだ。
それが、彼女のためだ。

髭を当たって備え付けのローションで剃り跡を整え、ドライヤーで髪も乾かしてセットする。

バスローブの腰紐を結びながらバスルームを出た。

菜摘は、ベッドの上に座り、シーツで身体を隠して、ぼんやりと私が出てくるのを見ていた。

「お早う」

「おはよ…」

菜摘と、目を合わせることができない。
さっさと服をきて支度をする私に、菜摘が焦るのが判った。

「早く、シャワーを浴びてきたら?」

振り向かずに言うと、のろのろとベッドから足を下ろし、シーツをバスローブに持ち替えて、申し訳程度に身体を隠しながらバスルームに入っていった。


「誰か、好きな男ができたんだろう…?」

いつ、聞こうか。

昨日から喉元を押し上げる疑問は、まだ口には届かない。
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