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秘密の恋人
第11章 虚勢
「好きな男が…できたんだろう…?」

自分の声は、こんなに醜悪だっただろうか…
そう思うほど、掠れて震えた声だった。

菜摘がふと俯く。

両手で包むように持ったコーヒーカップに視線を落とし、中のコーヒーを見つめながら、僅かに震えている。

まるで、夫に不貞を咎められている妻のようだ…あぁ、そういえば、あの時アイツもこんな目をしていたっけな…目の前の菜摘と、遠い記憶がリンクする。

だが今と昔は状況がまるで違う。今の私たちは、そんな、お互いを束縛できる関係ではない…
しかも私は、口ではそれを推奨してきた。

菜摘はその言葉に従っただけ、と思えば、彼女に何ら後ろ暗いところはないはずなのに。

彼女の反応は、良心の呵責を感じているように見え、それに安堵する自分がいる。

「反論がないのは、肯定ということかな。」

「…義隆さんが、私をどう思っているのかが知りたいの。正直に言うわ。今気になる男性がいます。その人から、お誘いも受けています。でも…私は貴方が好きです。だから、貴方が私にきちんと向き合って、恋人としてのお付き合いを続けてくれるなら、その人のお誘いは断ります。私がどうするかは、貴方次第。」
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