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きょうどうせいかつ。
第12章 それができたら くろうはしない。
「どうして勘違いしたのですか?あなたの憶測はあっていた、あなたの旅路は間違っていなかった。魔界に向かってずっと歩いてきたつもりかもしれない。でもそんなもの、ここには存在しないのです。航海を間違えて、同じ大陸に不時着したわけじゃないの」
「…………」
「薄々分かっていたんじゃないですか?でも、迷ったと思い込もうとしたんじゃないですか?でも、あなたが旅をしてきたのは確かに新大陸です。ここにあなたの国はない。あなたたちが呼んでいた魔界なんですよ」
ブレットが勇者として旅をしてきた日々には、一つの誤りがあった。
川を下り、海にでたブレットは、とある大陸に上陸した。
そこには城壁のようなものがあり、自分の知っている土地に、よく似ていたのだ。
だから勘違いしてしまった。戻ってきてしまったと勘違いしてしまったのだ。
自分は魔界を目指したつもりだったが、たどり着けず、自分の住んでいた大陸に戻ってきてしまったと、そう思い込んだのだ。
へとへとに疲れていたブレットは、まず宿を探した。
中央の国から出たことがなかったブレットは、ここが東西南北どれかの国だと信じ、疑うことはなかった。
『魔界』にも人がいるなんて、しかも、自分たちとは全く違う人がいるだなんて、思わなかった。
「ああ……」
何回目になるか分からない失望を、ブレットは味わった。
ああ……やっぱり──
やっぱり、そうだったのか。
以前、モニカが不思議なことを言っていた。
「私たちも『仲間』なのに、あなたは好いてくれるんだね」
『仲間』と言っていたのは魔族の仲間ということだろう。
ブレットの大陸に、人魚がいたとしたら、真っ先に殺されてしまっている。
だが、モニカの人魚伝説は、村の人から聞いたのだ。
──あそこには人魚が住んでいる。会ってみたらどうだ。
魔族を迫害するような場所で、そんなことが起こるはずない。
あんなに嬉しそうに、人魚を語るはずない。
人魚も立派な魔族なのだから。