この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きょうどうせいかつ。
第12章 それができたら くろうはしない。
ブレットが驚いたことに、クリスを除く全員が、ダミアンの話す言葉が魔族特有のものだと、気づいていなかったらしいのだ。それは一体どういうことかと思ったのだが、それよりもみんなの衝撃の方が強く、一時ちょっとしたパニックになったのだ。
そんなみんなの様子を、ダミアンは再び無表情で、聞いているだけだった。時々、頷いたりはするのだが、そんなことよりも、どうして人の言葉が話せないのか気になっているようだった。
唯一、イザベラはなにか心当たりがありそうだったのたが、何分、イザベラの性格上なにも言わない。ただ、にやにやと面白そうに笑って、黙ったまま、皆の様子を観察するだけだった。
冷静に考えれば、違う言葉を話していることぐらいわかりそうなのだが、皆が楽天的なためか、違和感を抱きながらも全く気にしていなかったのだから、間抜けとも思えるだろう。
なぜなのかと聞いてもわからないと答えるだけのダミアンに、皆はしべれを切らし、従来の通り、気にしない方向でいくことに決めたようだった。
しかし、そこで納得できないクリスは、根掘り葉掘り原因を突き止めようとしていたのだが、時間の無駄だと気づき、先ほどようやくやめてくれたようだ。
そんなこんなで、話し合いから一時間半ほど経過したときだった。
イザベラが、いつもと変わらない様子で、このようなことを言い始めたのだ。
「国に帰ってみましょうよ」
その、能天気ともいえる発言には、誰もが度肝を抜いた。
中でもひときわ驚いていたのはブレットで、イザベラの考えがコロコロ変わることに腹をたてたようだった。