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きょうどうせいかつ。
第16章 なんぎなことを するものだ。
男はその台詞を聞いて、背筋に寒気が走るのを感じた。
今すぐここから逃げ出したいという願望が、頭の中をよぎる。
「私は魔王様に命を救われた。つまり、私を襲った、いいえ、私を殺そうとしたという事は、魔王様の意思に背くこと。貴方たち、死刑確実ね」
イザベラは、幼い少女のように朗らかな笑みを浮かべ、男のそれから手を離す。
特に何の拘束もしていないにも関わらず、男は動こうとしなかった。
脚が竦んでしまっている。
魔族たちにとって魔王は絶対。何よりも代え難い存在である。その魔王が命を救ったものを、再び殺そうとするなど、魔王の意思に背くことになる。すなわち、魔界の法によって罰せられ、大罪を置かした経緯が明るみに出ることを意味していた。
そして、魔王の逆鱗に触れた者が、もがき苦しみながらこの世を後にした事も、よく理解していた。
「イザベラ……っ!」
突然、勢いよく部屋の扉が開き、鬼のような形相をしたブレットが入ってきた。
イザベラは、咄嗟に魔力でドレスを構築し、それを身につける。
「ブレット……」
あまりにも突然だったので、以前着ていた水色のドレスとは違い、真っ赤なドレスになってしまった。
まあ、これぐらい大丈夫でしょう。
それにしても驚いた……。
「はあはあ……。はあ、聞いて、くださいよ、姐さん……。ブレット、さんったら、急に、走り出、すんですも、ん……」
ベンジャミンは苦しそうに、胸を抑えながら、遅れて入ってくる。
「…………」
「ほら、心配ないって、言ったでしょう……?」