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きょうどうせいかつ。
第16章 なんぎなことを するものだ。
「人間が未知の出来事に出会った場合、どうやって処理をしていくか分かる?」
「……………………………」
「人間以外のせいにするのよ。人間以外のせいにして、同族嫌悪をするよりも、傷を舐め合って、未知の生物を作り出すの。このとき、少年がいなくなり──人々は魔物の存在を恐れ始めた。あるいは悪魔──。あるいは神──。どれも共通しているのは、人間以外の生き物だということ」
イザベラの独白は続いた。それは独り言のようで、おそらく、誰にも話しかけていないのだろう。
もしかしたら、ブレットの存在など忘れてしまっているかもしれない。
「おかしな話よね──。魔物は人間の想像力で生み出されたの。噂は噂──とでも思っていたのかしら。でも、その噂が広まれば、本当のことになる──」
「そもそも、人間という存在はね、生きているだけで膨大なエネルギーを消費しているの。その上、人口も多く、影響力も高い。その人間が一斉に魔物が存在すると認識したら、本当に存在してしまうのよ。いなかったものが、誕生してしまうの」
「ねえ、魔界はどうして存在すると思う?」
「え……」
「質問を変えるわ。魔物はどうやったら消えると思う?」
「…………」
「魔物に寿命があるとするなら、きっとそれは、人間が滅ぶ時なのでしょうね」
「人間が……滅ぶ──」
「あら、考えたことがない、といった感じの表情ね。魔界は人間の想像力から生まれた世界。その根源がなくなったら、魔物たちは消えるしかないわ。人間の元に生まれ、人間とともに消える──それが魔物の運命なの」