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きょうどうせいかつ。
第16章 なんぎなことを するものだ。
イザベラは、魔力を使って五人の男たちを空中に浮かせた。
本当に不思議なのだが、どうやったらこんなことが出来るのだろうか。
後で聞いた話によると、魔力はどうしたいか具体的に想像しなくてはいけない上に、集中力がいるらしい。なので、並大抵の神経じゃ、すぐに疲れてしまう。取り分け、このように、何個も(この場合は何人も)操るのは非常に困難らしく、それこそ、仙人になれるレベルの精神力が必要らしい。少し大げさだが、その話を聞いただけでも、イザベラがどれだけすごい人物なのか分かる。
「起きなさい──」
魔力の使用によって、人間(まあ、魔物なのだが)が目を覚ますなど、本当に次元が違いすぎて、危うく笑いそうになってしまったのだが、不謹慎なので我慢する。
というか、このときイザベラが彼らたちにしたこととは、脳の中に大量のドーパミンを流して脳を活性化させ、そこに電流を流して危機信号を認知させ、自分の身の危険を感じた脳が、無理矢理覚醒した、とかいう、生物学的なものではなく、単純に、何度も何度も持ち上げたり落としたりして、外部刺激によって目覚めさせるという、非常に原始的なやり方だった。
というか、それでは顔を何度も叩くのと変わりない。
それはもう、こんな風に何度も床に叩き付けられるくらいなら、頬を百回叩かれた方がましだと思うくらい、どすどすと落とされていた。
床が抜けるんじゃないかと本気で心配した。
「えい。てや」
イザベラはこんな可愛らしい声を出していたのだが、それは魔女っ子見習いが、一生懸命、ボールやら紙やらを持ち上げるときに言う掛け声であり、少なくともこんなにがたいがいい男(しかも五人)を持ち上げるときにいう台詞ではない。
どす、どす。
「……んん」
床に叩き付けること九回目、やっとこさ男たちが目を覚ました。
イザベラは、あともう少しだったのに……っ!と、十回叩き付けられなかったことが悔しかったようだ。
「いっ……」
それは痛いだろう。九回も床に叩き付けられたのだから。
少しだけ、男たちが気の毒に思えた。