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きょうどうせいかつ。
第9章 いつまでたっても はじまらない。
「そう言えば──」
「何?」
「今日、イザベラちゃん泣いてたやろ?あれなんで?」
そう言えば、そんなこともあったな、とブレットは振り返ってみる。
よく考えれば、イザベラが泣いたのだって、もとはといえばブレットのせいなのだし、後で謝っておこうと思った。
「ほら、あれだよ。王女様がお亡くなりになっただろう?それを報告したら──」
「ぷっ……。はははっ」
「おま……!笑うなんて失礼だろうが!」
ブレットはクリスを睨み付けたが、クリスはなかなか笑うのをやめようとしない。
ため息をついて、前に目をやると、いつの間にかキャメロンは消えていて、代わりにダミアンが部屋にいた。
「……ふう。いやな、その話、もうとっくに知っとったで」
「へ?」
「へ、やないわ。よう考えてみいや。お前が来る前にオレがここに来とんねんで?そんなんとっくの昔に報告しとるわ」
「じゃあ、何で……」
「イザベラちゃんは色仕掛けでもお前に言うこと聞かせよう思っててんで?泣き落とししようとでも思ったんちゃう?」
「……」
呆れて何も言えなくなったブレットを見て、クリスが再びけらけら笑い始める。普段のブレットならイライラしていただろうが、今の彼にはどうでもよかった。
「──でも、魔王……ダミアンも俺を殺そうとしたよな?」
「ダミアンがあ?──それこそありえへんわ。ダミアンは人殺しなんて真似、絶対できひんくらい臆病者やで?さしずめ、そうやなあ……脅しのつもりやったんちゃうん?」
ブレットはダミアンをはっと見たが、こくりとゆっくりうなずいた。
再び、ため息をつく。
何だよ。勘違いのすれ違いかよ。
「ダミアンは平和主義の放任主義。下におる殺し屋じゃあるまいし、滅多なことじゃ殺さんよ」