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きょうどうせいかつ。
第9章 いつまでたっても はじまらない。
「落ち着きました?」
ベンジャミンがそう言うと、男は天井をじっと見ていた。
よく見ると容姿はそこまで悪くない。
少し長めの黒い髪に灰みがかった緑の目。肌は白く、ダミアンと同じような服装をしている。
「イザベラのお嬢に怒られた……」
まるで絶望したかのようにそう呟いた。
「この人、デュークっていうんすよ。 バカで人殺しなんで、あんま関わらない方がいいっすよー」
軽い口調でそう告げるベンジャミンの様子を見て、どうしてこの人は、こんな可笑しな人の弟子になったんだろうか、と真剣に考えた。
「デュークはな、イザベラちゃんに一回負けとんねん。なんかよー分からんけど、負けた相手には忠実みたいやねん」
「……やっぱり俺は不幸だ。イザベラのお嬢を起こした。死んだ方がいい……」
「そんなん言うなし。イザベラちゃんかて、そこまで怒っとらへんかったって」
「いや、あれはすっげー怒ってましたよ──がっ……」
ベンジャミンが言い終わると同時に、デュークはベンジャミンの首を掴んだ。そのまま窒息させるくらい力を込めて、ベンジャミンを睨んでいる。
「デュ……ク、さ、はな……」
「残念だ……。非常に残念な話なんだが、せっかくクリスが俺フォローをしてくれたっていうのに、俺の弟子であるベンジャミンはその行為を無駄にした……。無はいい。無こそが一番だ。しかしどうだろう。せっかくの行為を無駄にするということは、失礼にあたるんじゃないか?そこで俺は考えた──」
「……ク、さ……」
ベンジャミンを掴んでいる手は力を緩めようとしない。
ベンジャミンの顔は、真っ青になり、真っ赤になって、土色になっていた。
「師匠である俺が責任をもってお前を殺せば、クリスも許してくれるんじゃないかってな」
「デュ……ん、や、め……」