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きょうどうせいかつ。
第11章 ひゃっかじてんは かんがえた。
「百科事典?」
「はい。僕らの種族は──」
「私たちの種族は、それぞれ個々の知識を所有していて、その知識はそれぞれの専門分野として、脳内に保存されております。そのことを『百科事典』と呼んでいるのです。私の番号は〇七番。つまり、百科事典としては七番目の悪魔でございます。また、私たちの種族は、生き延びるため、そして、情報を更新するため、脳内が繋がっております。テレパシー、とでも言いましょうか。百科事典として登録されている、二十五人の仲間たちと、いつでもどこでも連絡がとれるのでございますよ」
彼女は美しい声でつらつらと喋ったが、残念ながら、ブレットにはあまり理解できなかった。
ぼけーっとしていると、隣のクリスが、
「要するに、自分の持ってる知識のことを『百科事典』って呼んどって、こいつらの仲間は、脳内がリンクしとるってことやわ」
と補足説明してくれた。
「私たちは、各々の知識を共有、閲覧することが随時可能です。そのため、ブレット様の情報は、私たち一族の新たなる情報として登録されました」
「つまり、歩く図書館ってことか?」
「はい。それが一番分かりやすいかと」
「サラ……。もうちょっと分かりやすい説明しろよ……。ブレットさんが困っているだろう?」
「あなたに言われたくないわ。じゃあ、自分で説明しなさいよ」
「お前が止めたんだろう!」
どうやらう脳がリンクしているからといって、仲がいいわけではないらしい。二人は、ずっとそんな感じで、知識のぶつけ合いをし始めた。
「ちょっと、喧嘩を始めないでちょうだい。みんなが困っているでしょう?」
その喧嘩を止めた鶴の一声は、またもイザベラだった。
「申し訳ございません、イザベラ様」
「すんません、姐さん……」
二人はまるで犬のようにしゅんと落ち込み、それからあまり話さなくなった。
イザベラは、かなりの主導権を握っているらしい。そういえば、昨日あんなにうるさかったデュークも、今日は少しおとなしい。
改めて、イザベラのすごさを思い知った。