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きょうどうせいかつ。
第11章 ひゃっかじてんは かんがえた。
「すごかったやろー」
自分の席に戻ると、クリスがにやにやと笑っていたので、少しだけイラっとした。
「分かってるなら忠告くらいしてくれよな」
「どんなときも警戒心を怠るな、西の国にいたじいちゃんに教わらんかったん?」
「…………」
確かに、西の国の外れには、とても強い老人がいて、その老人はそんなことも言っていた。
ブレットはその老人を自分の師匠のように慕っていて、だからこそ、クリスの発言は癪だった。
自分に警戒心が欠けていることは、ずいぶん前から自覚していた。
それでも、なんとか努力して、それなりに敏感になったと思っていたが──。
またここに来て鈍ってしまった。
それは何故か。
ここにいる連中が、自分に危害を加えないと分かっているからなのだろうが、それにしても、ブレットは不思議でならなかった。
ここにいるほとんどの者が、人ならざる者だというのに、全く警戒していない。
それどころか、好意さえ抱いてしまっている。
三日前の、ここに来る前の自分だったら、確実に刃物を向けていただろう。
しかし、そうしないのは──否、できないのはどうしてなのだろうか。
それは、イザベラがいるからだろうか。
いや──、何か違う気がする。
相変わらず、魔王に対しての敵対心は消えていないのだが──この気持ちは、憎しみというよりも嫉妬に近い。
自分が丸くなってしまった。
角の根こそぎとられてしまったように思えた。
戦う気にならないのだ。
むしろ戦いたくないとも思っているのだ。
情がわいてしまっているのだ。
この、魔物たちに対して──。