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紅蓮の月~ゆめや~
第7章 第二話 【紅蓮の花】 二
 二人の血に染まった雪の上にまたひとひら、ひとひらと雪は落ちてくる。
 降りしきる雪の中、ひっそりと佇んだ椿の樹が二人の烈しくも静かな最期の瞬間を見守っていた。その樹にたわわについた花は、義経と凛子の血のようにつややかで、燃え立つ焔のような鮮やかな紅(べに)。
 表の方ではまだ戦う者たちの雄叫びや怒号が止むことなく続いている。義経の第一の従者武蔵坊弁慶が敵方の矢を満身に受け、仁王立ちになったまま事切れるのはこのときのことである。
 やがて、居残った義経の郎党の手により館には火がかけられ、義経と凛子の亡骸は紅蓮の焔に包まれた。だが、不思議なことに、焼け跡からは義経と凛子のものらしい亡骸はついに発見されなかった。焦った泰衡が家臣に命じて厳重に調べさせてみても、二人はどこからも見つからなかったのである―。
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