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紅蓮の月~ゆめや~
第9章 第三話 【流星】 プロローグ
何かのお手伝いをしてご褒美に貰った十円玉を二つか三つ小さな手に握りしめ、まるで飛びはねるように走っていった。ガラスの瓶には色とりどりの飴玉が宝石のように収まっていて、美都は小さな胸を弾ませながら、二個か三個だけ店のおばさんに紙袋に入れて貰った。
美都と同じ歳の孫が東京にいるというおばさんは(孫がいるとは言っても、そのおばさんはまだ五十そこそこで、五歳の美都から見ても『おばあさん』という雰囲気ではなく、十分若々しかった)、いつも白い割烹着がよく似合っていた。たいてい店先の椅子に座って店番をしており、美都が行くと細い眼を更に細めて迎えてくれた。
おばさんは一個十円の飴玉を必ず一個だけ余分に袋に入れてくれる。美都はおまけしてくれたその飴をなかなか食べる気になれなかった。家に帰っても宝物のように大切にして、指でつまんで眼の前にかざしては色んな角度から眺めていたものだ。
美都と同じ歳の孫が東京にいるというおばさんは(孫がいるとは言っても、そのおばさんはまだ五十そこそこで、五歳の美都から見ても『おばあさん』という雰囲気ではなく、十分若々しかった)、いつも白い割烹着がよく似合っていた。たいてい店先の椅子に座って店番をしており、美都が行くと細い眼を更に細めて迎えてくれた。
おばさんは一個十円の飴玉を必ず一個だけ余分に袋に入れてくれる。美都はおまけしてくれたその飴をなかなか食べる気になれなかった。家に帰っても宝物のように大切にして、指でつまんで眼の前にかざしては色んな角度から眺めていたものだ。