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紅蓮の月~ゆめや~
第9章 第三話 【流星】 プロローグ
本当にまるで自分ではない誰かが自分の口を借りて喋っているような感覚だった。
女主人が魅惑的な微笑みを浮かべる。
「その歌はこの着物をお召しになったお方が詠まれたもの。やはり、この着物はあなたを選んだようですね」
「この着物が私を?」
美都は女主人の言葉の意味を計りかねた。着物が人を選ぶなんて、そんなことが現実にあり得るとは信じられない。
美都の想いを知ってか知らずか、女主人は淡々と続けた。
「この袿をお召しになった方は良人の多情にたいそう悩んでおいででした。その嘆きが今、あなたが口ずさんだ歌から聞こえてくるようです」
良人の多情という部分に、美都は少なからず動揺した。美都が幼い琢己を置いてマンションを飛び出してきたのも、ひとえに良人の浮気が原因だからだ
女主人が魅惑的な微笑みを浮かべる。
「その歌はこの着物をお召しになったお方が詠まれたもの。やはり、この着物はあなたを選んだようですね」
「この着物が私を?」
美都は女主人の言葉の意味を計りかねた。着物が人を選ぶなんて、そんなことが現実にあり得るとは信じられない。
美都の想いを知ってか知らずか、女主人は淡々と続けた。
「この袿をお召しになった方は良人の多情にたいそう悩んでおいででした。その嘆きが今、あなたが口ずさんだ歌から聞こえてくるようです」
良人の多情という部分に、美都は少なからず動揺した。美都が幼い琢己を置いてマンションを飛び出してきたのも、ひとえに良人の浮気が原因だからだ