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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
それでいて、藤原北家の嫡流であり、関白師輔の子息という立場もあいまって、内裏に仕える女房たちにも人気があった。また坊っちゃん育ちというか、育ちの良さが自然と態度にも表れ、陰謀画策渦巻く政(まつりごと)の世界にありながら、どこか浮世離れした雰囲気を漂わせている。それが女性には特にたまらないというか母性本能をくすぐるのだ。
後に兼家のこの茫洋とした印象は本人が故意に作り出しているものだと美耶子は知ることになる。真の兼家という男は、やはり海千山千の政治家師輔の息子らしく、なかなか油断ならぬ人物であった。だからこそ、後年、兼家は花山帝を欺いてまで、己が娘詮子(せんし)の産み奉った一条帝を帝位につけることに成功するのだが、それはまだまだ先の話である。
後に兼家のこの茫洋とした印象は本人が故意に作り出しているものだと美耶子は知ることになる。真の兼家という男は、やはり海千山千の政治家師輔の息子らしく、なかなか油断ならぬ人物であった。だからこそ、後年、兼家は花山帝を欺いてまで、己が娘詮子(せんし)の産み奉った一条帝を帝位につけることに成功するのだが、それはまだまだ先の話である。