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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
確かに兼家の正室時姫が懐妊中であることは知っている。出産が近いことも耳に入っていた。だが、これまで時姫は既に幾人もの子を生んでおり、皆安産であったという。ゆえに、こたびも今までのように経過も良好なものと思い込んでいたのだが。
「美耶子、確かに私は好き者と言われても仕方のない男だ。だが、私は私なりにそなたを真剣に愛し、大切にしてきたつもりだ」
兼家の声は美耶子をハッとさせるほど冷めていた。
「―殿」
しばらく茫然としていた美耶子が我に返った時、既に兼家の姿はなかった。慌てて追いかけようとして、美耶子はへなへなとその場に座りこんだ。
「美耶子、確かに私は好き者と言われても仕方のない男だ。だが、私は私なりにそなたを真剣に愛し、大切にしてきたつもりだ」
兼家の声は美耶子をハッとさせるほど冷めていた。
「―殿」
しばらく茫然としていた美耶子が我に返った時、既に兼家の姿はなかった。慌てて追いかけようとして、美耶子はへなへなとその場に座りこんだ。