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紅蓮の月~ゆめや~
第2章 紅蓮の月 一
―良いか、帰蝶。織田家にひとたび入ったからには、これまでのようにじゃじゃ馬姫なぞと物笑いの種なってはならぬ。心を入れ替え、なよやかな深窓の姫らしう振る舞うのだぞ。何しろ、あのうつけはなよなよとした大人しやかな女が好みと申すからな。間違うても、本性を出すでないぞ。
と、いささかくどいほど念を押されて送り出されたのである。帰蝶の父道三は美濃の国守であり、稲葉山城の城主だ。帰蝶はその娘として、尾張の織田信長に嫁いだ。むろん、この戦国乱世の時代にありがちな政略結婚だ。当時の結婚は、婚姻により姻戚関係を結ぶことによって、無用な戦いを避けるための手段であった。つまり、帰蝶は織田家にとって道三が差し出した人質なのだ。
道三は帰蝶の魅力で良人となる信長を骨抜きにせよと言ったけれど、大体信長好みだという楚々とした美人とは縁遠い帰蝶である。
と、いささかくどいほど念を押されて送り出されたのである。帰蝶の父道三は美濃の国守であり、稲葉山城の城主だ。帰蝶はその娘として、尾張の織田信長に嫁いだ。むろん、この戦国乱世の時代にありがちな政略結婚だ。当時の結婚は、婚姻により姻戚関係を結ぶことによって、無用な戦いを避けるための手段であった。つまり、帰蝶は織田家にとって道三が差し出した人質なのだ。
道三は帰蝶の魅力で良人となる信長を骨抜きにせよと言ったけれど、大体信長好みだという楚々とした美人とは縁遠い帰蝶である。